みなさん、こんにちは。
株式会社フォーエム マーケティング事業部です。

改正個人情報保護法の施行まで残り1ヶ月を切りました。

更に2024年にはいよいよChromeの3rd Party Cookie段階的廃止も始まる予定であり、昨年に引き続きポスト3rd Party Cookie戦略への意識が強まっていると思います。

日本に先駆けCookie規制が強まっているグローバルにおけるデジタル広告市場では、パブリッシャーの皆さんにとって耳の痛い調査結果が出ています。

(画像引用元:https://digiday.jp/platforms/the-rundown-google-meta-and-amazon-are-on-track-to-absorb-more-than-50-of-all-ad-money-in-2022/

このチャートはデジタルマーケティングに関する市場調査を行っているeMarketerが出した2021年度の広告市場の収益です。先日のDIGIDAYの記事にも書かれていますがデジタル広告におけるWalled Gardenが占める割合は2020年の67%から74%へと上昇しています。

Walled Garden…GAFAなどを中心に、プラットフォーマーが自社サービス内に極力ユーザーをとどまらせようとする施策のことを総称して「Walled garden」と呼び、「クローズドプラットフォーム」とも同じ意味

これはユーザープライバシー保護意識の高まりを受けて、3rd Party Cookieを用いたターゲティングや効果測定が厳しく規制され始めていることが原因です。

既にAppleのSafariやMozillaのFirefoxなどのブラウザで3rd Party Cookieの利用が規制され、モバイル端末でもiOSでの広告識別子の規制が始まっています。

これらの動向を受け、広告主が膨大なユーザーデータと高度なソリューションを提供しているWalled Gardenが提供するサービスに広告予算を代替していると考えられます。

そのような背景の中で期待されている新しい技術が、今回の記事で紹介する共通IDソリューションです。2023年後半からChromeでの 3rd Party Cookie規制が始まるだけでなく、先日発表されたようにAndroid端末での規制も今後行われる予定ですので、本記事を読んでいただき、是非パブリッシャーの皆さまは今のうちから導入を検討してみて下さい。

新技術 IDソリューション誕生の契機

そもそもIDソリューションがここまで注目を浴びることになったきっかけは冒頭で述べたように 3rd Party Cookieへの規制が強まったことにあります。下記のチャートは 3rd Party Cookieを始めとしたデジタル上での個人情報がこれまでどのように規制されてきたのかを示しています。

(画像引用元:https://www.google.com/url?q=https://www.iabseaindia.com/blog/the-death-of-the-3rd-party-cookie-and-tracking-as-we-know-it-a-practical-approach-to-prepare-for-the-changes&sa=D&source=docs&ust=1645691662343408&usg=AOvVaw1ifuIrZTEzLX3RtqHPv2YK

3rd Party Cookieの規制強化の背景は、ユーザーが同じサイトを複数回訪れる際に無駄な工数を踏まずに利用可能にするCookieの本来の性質を、サイト運営者ではない事業者(広告配信会社やDMP事業者など)が利用したことに端を発しています。

複数のサイトで発行したCookieを横断的に分析することで個人を特定することが可能であり、広告配信会社などはこれらのデータを元にユーザーターゲティングやメディアプランの策定、配信広告の効果検証サービスを提供してきました。

こうしたサービスは広告業界から見るとパフォーマンスが良く利便性が高い一方で、ユーザー側からすると自分の許可無くこうした事業者が無断でデータを取得・分析を行いサービスを提供していることは、ユーザープライバシーを侵害していると感じられます。

こうした問題が露見した結果、2018年頃から欧州を中心に規制が強化され始めました。規制は各国の法規制とブラウザやモバイル端末を製作する大手プラットフォーマーの独自規制の2種類が存在し規制が強化されてきました。

IDソリューションとは

こうした規制強化を受けて近年欧州を中心に、ユーザープライバシーを保護しながらも3rd Party Cookieを利用したようにユーザーターゲティングや配信広告の効果検証を行いたいという要望が高まりました。

これを受けて注目され始めた技術が、今回の記事の主題であるIDソリューションです。

(画像引用元:https://plazma.red/plazmaafter3rdpartycookie-liveramp-japan/ LiveRamp資料)

IDソリューションはサイト運営者や広告主が発行・管理するCookieデータ(1st Party Cookie)などの閲覧履歴データやサイト内のコンテンツ閲覧のためにユーザーが入力する名前やメールアドレスといった個人情報を元に、3rd Party Cookie同様にユーザーターゲティングや配信広告の効果測定を行える技術です。

IDソリューションの魅力

1.ユーザーのプライバシー保護

IDソリューションは、広告主やアドテク会社と暗号化されたIDのみを媒介にして行います。したがってユーザーからオプトアウト方法を記載したプライバシーポリシーを承諾してもらうことで、ユーザーのプライバシー保護を維持しながらこれまでのオーディエンスターゲティングを続けることが可能です。

 

2.オーディエンスターゲティングによるパブリッシャーのCPM維持

欧州を始めIDソリューションがここまで注目を浴びている最大の理由は、Cookie規制が既に行われているブラウザや端末でもこれまで同様に、ユーザーターゲティングや配信広告の効果測定を行えることです。

 

以下のチャートは2020年におけるデスクトップとモバイル端末におけるブラウザシェアをグローバルと日本で比較したものです。SafariやFirefox、Edgeは既にブラウザが 3rd Party Cookieの利用を独自規制していますが、これらブラウザのグローバルシェアは合計するとデスクトップ・モバイル端末共に20%以上を占めています。すなわち既にこれだけの割合でこれまでのように 3rd Party Cookieを用いてはユーザーターゲティングが行えなくなっているということです。

(画像引用元:https://plazma.red/plazmaafter3rdpartycookie-liveramp-japan/ LiveRamp資料)

更にブラウザではないですが、iOS専用の広告識別子であるIDFAの規制も強化されていることから実質より多くの広告費がターゲティングなどを行えていないのです。

→IDFAについて更に知りたい方はこちらから

また2023年後半にはブラウザ最大手のChromeも段階的に 3rd Party Cookieの利用を廃止していく予定であることも加味すると、今後これまでのようなオーディエンスターゲティングを利用することができなくなります。

しかし、IDソリューションを利用すればこれらの規制を遵守しながらもこれまでのようにオーディエンスターゲティングを利用することが可能です。

IDソリューションは広告主やDSPといったデマンド側との連携も進めており、発展途上の技術のため大規模な広告キャンペーン事例は発表されていませんが今後一層利用されていくと思われます。

3rd Party Cookieの廃止によってオーディエンスターゲティングの精度が落ち、パブリッシャーのCPMが低下することが想定されますが、IDソリューションの台頭によってCPMを維持することができるのではないかと考えられます。

IDソリューション導入における検証ポイント

先述したとおりIDソリューションは発展途上の技術です。更にIDソリューションを提供する事業者の数は年々増加しており、どのサービスが今後伸びていくのかは動向を見続けなければわからない状況です。

一方で2023年後半にはChromeでの3rd Party Cookieが段階的に廃止がされ始めるため、今のタイミングから徐々に利用を進めていくことをお勧めします。したがって、ここからは複数のIDソリューションを試用する際に意識すべきポイントをご紹介します。

1.導入したIDソリューションのデータセキュリティレベルは十分か

メリットの部分で紹介した通り、IDソリューションの魅力の1つはユーザーのプライバシー保護に配慮した形で活用できる点です。したがって、複数のIDソリューションを活用していく中で、ユーザーデータの漏洩可能性がないか見極めましょう。

 

2.3rd Party Cookieのサービスと比較してオーディエンスターゲティングは有効か

利用することで価値が最大限発揮される技術です。この点を踏まえて3rd Party Cookieを活用したオーディエンスターゲティングと比較して同等の効果を生んでいるかを確認しましょう。

 

現時点で言えば、既に規制が開始されているSafariやFirefoxといったブラウザでキャンペーンを行うと効果を感じられやすいかと思います。また単純な検証は難しいですが、Chromeでも今のうちから検証すると、今年後半からの規制に余裕を持って準備することが可能だと思います。

IDソリューション導入までのステップ

ここまでIDソリューションの仕組みから魅力、導入後に見極めるべきポイントまで紹介してきました。そこで最後に、今からIDソリューションを実際に導入する上で必要なステップを紹介します。パブリッシャーの皆様の状況ごとに紹介するので、ご自身の会社の状況に合ったものを参照して是非お早めに検討してみて下さい。

ちなみに…フォーエムは様々なタイプのIDソリューションをワンタグで導入することが可能です。ここまでお読み頂いて導入を検討したい方は以下のリンクからお気軽に問い合わせ下さい。

ここまでお読みいただいて導入を検討したい方は以下のリンクからお気軽にお問い合わせください!

RampID
ID5
IM-UID
SharedID
Unified ID 2.0

↑導入可能なIDソリューション

1.導入するIDソリューションの活用方法を確認する

IDソリューションを導入する際にまず確認すべき点は、発行したIDがどのようなデータと統合されどう利用されるかを確認することです。IDソリューション事業者によってはメールアドレスをID化するものも存在します。またIDソリューションと連携されるDSPやDMP、CMPなどプラットフォーム事業者も異なります。したがって導入を検討するIDソリューションで行いたいデータ活用をまず始めに明らかにしておきましょう。

 

2.プライバシーポリシーへオプトアウト規定を追加する

一先ずIDソリューションを用いて自社のユーザーをID化することを目指す場合には、現在利用しているプライバシーポリシーにオプトアウトを追加するだけで大丈夫です。

 

オプトアウト形式…本人の求めがあれば事後的に停止することを前提に、提供する個人データの項目等を公表等したうえで、本人の同意なく個人データを提供できる形式

※導入したIDが個人を特定する情報と紐付けられる場合

IDは今年4月から施行される改定個人情報保護法によって個人関連情報とみなされるので、発行したIDが発行後個人を特定する情報と紐付けられる場合、オプトイン形式で利用許諾を確認する必要があります。

(画像引用元https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shomu_ryutsu/bio/kojin_iden/life_science/pdf/001_03_02.pdf

オプトイン形式…ユーザーから事前に同意を得てユーザー情報の取得・利用を行う形式。GDPRに遵守する必要がある企業が採用する形式

その際に、パブリッシャー自身がユーザーの同意情報を管理することは難しいので、CMP(同意管理プラットフォーム)を利用することがお勧めです。

CMP…サイトに訪れたユーザーの利用目的ごとにユーザー本人の同意を取得・管理することができるツール

まとめ

さて、今回は現在注目されているIDソリューションについてを紹介してきました。他のオーディエンスターゲティング手段と比較して国内で導入しているパブリッシャー数は多くありませんが、デマンド側の事業者が参加し始めたことを受けて徐々にその数も増えてきています。

また今年の後半からブラウザシェアの6割を占めるChromeが3rd Party Cookieを段階的に廃止します。そのような事態になってはじめて、これまでの広告配信手法から新しい手法に変換することは非常にリスキーな選択だと思われます。

したがって本記事を読んで頂いた皆様には、3rd Party Cookie依存の手法から代替する準備を検討し、ゆとりをもって準備して頂ければと思います。

更に詳細を知りたい方は下のお問い合わせからご相談頂ければフォーエムの担当者が丁寧に説明させて頂きますので、いつでもお気軽にお問い合わせ下さい。

また各IDソリューションの詳細については今後記事としても追加していく予定ですので、気になる方はメルマガ登録してチェックしてみて下さい。